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腎臓を小さくする方法があった

多発性嚢胞腎患者は、透析治療を開始してもなお嚢胞が発達し腎臓がますます大きくなるらしい。そうすると当然それに伴う痛みや日常生活への支障が深刻になってくる。この嚢胞が発達するということは、嚢胞に栄養を与える血管も発達している。医師はここに注目し、血管を塞ぎ、嚢胞への血液循環を遮断することで嚢胞の成長をストップさせるという技術を確立した。動脈塞栓術という。


70年代に初めてこの有効性がWallaceらによって報告されから、各地でその有効性の報告があった。日本で、この療法を多発性嚢胞腎患者に対する治療法として確立させたのは、
乳原 善文(うばら よしふみ)先生

仏語や英語の関連文献にはたいていUbara et al の文献が引用されている。

その後、この療法が腎移植目的のために適応された例はすでに多く、これまた英語、仏語、日本語でたくさんの情報が出てきた。


米国泌尿器科学会(The American Society of Nephorology)学会誌に2016年に掲載された鵜原医師を含む日本人医師らによる論文では、虎ノ門病院において2006年1月から2013年7月の期間、腎動脈塞栓術を受けた多発性嚢胞腎患者449例を対象とした研究結果が報告されている。
(以下、原文)

Suitability of Patients with Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease for Renal Transcatheter Arterial Embolization


色々ざっくり読んだ上での私の結論は、この療法は移植に備える方法として①一番低侵襲(体への負担が少ない)であり、何よりも②輸血のリスクが最も低い。


一方、デメリットは ①腎臓縮小まで6か月待つ必要があること、②この療法で腎機能自体が低下する可能性もあること(透析治療が前提)の2点。後者についてはまだよく理解できていないが、腎摘出のケースでも透析治療開始が必要なことを踏まえれば、その辺のリスクは同じかもしれない。


いずれにしても、「輸血リスク」だけを考えれば、この療法は夫に適応可能かどうか確認する価値は多いにあり。夫自身もこの方法にかなりの期待を抱いている。

以下、フランス国内の文献から、有用と思われる研究を1点記録しておきます。

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2019年9月にフランス泌尿器科学会誌に掲載された論文
「腎移植前腎摘出の代替としての多発性嚢胞腎の腎動脈塞栓療法」(筆者和訳)。
R.Saljoghi,  A.LeVourch,  B.Renard,  A.Villers, S.Bouyé

原文はこちら

Embolisation artérielle des reins polykestiques en alternative à la néphrectomie ergonomique en pré greffe rénale

(以下、筆者による要約と和訳)

<研究の目的>
本研究は常染色体優性多発性嚢胞腎患者において、腎臓の大きさから腎移植が困難と判断された患者を対象に、腎動脈塞栓術(EAR)後の腎容積減少についてレトロスペクティブに評価した。

<対象者>
2014年11月~2017年3月の期間、腎移植前準備としてEAR治療を受けた多発性嚢胞腎患者15例。対象者全て末期もしくは重度の腎不全患者。

男女比 女性:4例、男性:11例
内、透析治療中患者:13例
平均年齢:54歳(32~71歳)
移植腎保持者:3例

塞栓した動脈数   1本:11例、2本:2例、3本:2例
治療をした腎    右腎:11例、左腎:4例

<結果>
手術時間平均:70分(57~98分)(全身麻酔)
術後入院期間平均:4.2日
輸血を必要とした例:ゼロ
14例が6か月後に腎移植可能となる腎容積になった
本治療実施後、腎移植までの待機時間平均:14.3か月


腎臓サイズの変化

治療前:2550,6 cm3 ± 1771 (1102 cm3 - 7310 cm3 )
治療3か月後:1684 cm3 ± 1539 (648 cm3 - 6930 cm3 ) 平均33%の減少
治療6か月後:1632 ± 1743 (599 cm3 - 6758 cm3 )   平均40.7%の減少

7例(46.6%)がその後の腎移植成功

1例のみ、非常に高い腎臓体積(7310 cm3)のため2次的な腎摘出手術を要した
塞栓後症候(発熱、嘔吐、腹部の痛み):ゼロ
合併症による再入院:2件(通過再開困難、腹痛)

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今日の写真は、散策中に出会ったザリガニ


秋になると、ご近所さんが「ザリガニ釣りに行くんだ」といって我家の前を通っていくのですが、私はそのザリガニをここで見かけたことがなく、どこにいるか謎でした。

それが先日、いつものように森を散策中、小川の水が道に溢れ出ている流れに乗って、ゆっくり歩く彼に遭遇。近くに寄ってみると、どうしてもバルタン星人にしか見えなくなり、昔々のウルトラマンのテレビ画面が頭に浮かぶ。そしてよくよく見ると、左のハサミがない!と思ったら、非常ーーーに小さいハサミが見えた。トカゲのようにハサミが切られてもまた伸びてくるのだろうか? 帰って検索したら、どうやらそうらしい。脱皮を繰り返してハサミを再生するのだとか。すごいなあ。

腎臓も脱皮を繰り返して再生可能だったら・・・と一瞬思ったけれど、すでに再生医療という幹細胞を培養して組織を作り体内に移植するというすごい技術が発達しつつある。これはある意味、非常に怖い。



目が合って、ザリガニさん10秒ほど固まってしまったけれど、その後気を取り直してまた水の流れにそって歩いていきました。頑張れよ。


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